下水処理研究会第13回セミナー報告概要

 
     主  催:(社)日本水環境学会東北支部下水処理研究会
     後  援:(財)宮城県下水道公社
     日  時:平成13年12月7日(金)13:30〜16:00
     場  所:勾当台会館3F蔵王東の間
              仙台市青葉区国分町三丁目9−6
     参加者数:59名
 
<挨  拶>  
(社)日本水環境学会東北支部下水処理研究会世話人
   江成 敬次郎(東北工業大学環境情報工学科)
 
<セミナー 1>
演題:臭気概論 
演者:新垣 康秀(宮城県保健環境センター大気部総括研究員)
1,においと嗅覚
1)嗅覚の特性
・鋭敏さ:人間の嗅覚は一般的に機器分析以上。特に危険なにおい鋭敏。
・疲労・順応:しばらくかいでいると嗅細胞が疲労し感じなくなる。順応という。
・個人差:個人差が大きい。20〜30代で感度がよい。
・閾値の変動:気温,湿度,風等の気候条件、体調、満腹、空腹等で変化する。
2)においの表し方
・6段階臭気強度:無臭から強烈なにおいまで6段階で表示。測定レンジが狭い
・9段階快・不快度:快・不快を9段階で表示。個人差が大きい。
3)悪臭
 人に不快感、嫌悪感を与えるものであって、一般に低濃度、多成分の複合臭気であり、人間の嗅覚に直接訴え、生活環境を損なう恐れのあるにおい。
 地球上にある約200万種類の化合物のうち約40万が何らかのにおいを持ち、悪臭物質としてある程度重要なものは約1万。
2,悪臭の測定方法
1)機器分析法
悪臭物質の検索が可能で濃度が明確。複合臭気には対応できない場合がある。
2)嗅覚測定法
a.直接表示法:希釈操作がないので簡便だが、再現性、安定性、客観性に欠ける。
・三点比較式臭気採点法:パネル8名でにおい袋の6段階臭気強度を測定。
・現場臭気強度法:パネル4〜6名で悪臭発生源敷地境界線等の臭気強度を測定。
b.希釈法:複合臭気としての測定値が得られ、住民の感覚とも一致しやすいが、主成分となる悪臭物質の濃度や物質名を表示できない。
・空気希釈法:悪臭空気を無臭空気で希釈し検知閾値を求め、それに要した希釈倍数を臭気濃度として表す。三点比較式におい袋法が一般的。
・水希釈法 :悪臭を吸収した水試料では、同様に水で希釈し、希釈倍数を臭気濃度として表す。三点比較式フラスコ法が一般的。
3,脱臭方法
1)物理的方法
・水洗法:噴霧方式,充填方式    ・冷却凝集法:水冷法,空冷法
・吸着法:活性炭,ゼオライト    ・希釈法:空気希釈,大気拡散
2)化学的方法
・薬液洗浄法:酸洗浄,アルカリ洗浄,アルカリ及び次亜塩素酸洗浄,酸化洗浄
・化学吸着法:添着活性炭,酸化鉄,イオン交換樹脂
・燃焼法:直接燃焼法,触媒燃焼法,蓄熱式燃焼法
・臭気中和酸化法:中和剤,マスキング剤,オゾン
3)生物学的方法
・固相型:土壌脱臭法,充填脱臭法  ・液相型:ガス分散法,液分散法
 

<セミナー 2>
演題:仙台市下水道における硫化水素によるトラブル事例
演者:山田 耕司(仙台市下水道局施設部水質管理センター技師)
1,仙台市の下水道
 今年が仙台市の下水道100周年。普及率は93.7%で維持管理の時代となってきた。
2,管渠での陥没事故事例
1)発生場所の状況
 陥没事故発生場所は秋保温泉浄化センター第2ポンプ場圧送管開放部(圧送距離約550m)。使用期間は10年未満。この部分の腐食が著しかったが、ポンプ上流部及び圧送後の自然流下部では腐食は見られなかった。腐食は気相部で進行しており、接液部は腐食がなかった。
2)硫化水素濃度の測定結果
 硫化水素濃度計でマンホール内の濃度を測定したところ、圧送管開放部マンホールで流水がある時だけ硫化水素が検出された。ドジチューブでマンホール内の平均硫化水素濃度を測定したところ、第2ポンプ場圧送管開放部だけ他に比べて硫化水素濃度が高かった。
3)腐食原因の推定
 流入下水には温泉排水が混入しており、水温が年間を通して高い。硫酸イオン濃度は他の下水処理施設に比べて特に高くはない。仙台市の圧送管としては特に長いものではない。これらのことから、温度が高いということが生物の活性を促進し、硫化水素の発生を促した大きな要因ではないかと考える。
4)対策
 腐食部分の管渠の補修を行った。本調査でのマンホール内の硫化水素濃度は著しい腐食を起こすほどの濃度ではなかったことから、過去にそのような状況となっていたと考え、硫化水素発生抑制対策は実施していない。

inserted by FC2 system