●日本水環境学会東北支部「上水道研究会」実施報告●

(H16.5/20)

上水道研究会代表 今野 弘
(東北工業大学)

2003年度の「上水道研究会」を下記のように実施した。

開催日時 ; 2004年5月17日(月) 16:20〜17:45
開催会場 ; 東北工業大学一番町ロビー
          仙台市青葉区一番町1-3-1 ニッセイ仙台ビル 4F
           Tel 022・723・0538
研究会テーマ ; 水道施設の地震被害と耐震対策
研究会講師 ; 東北学院大学工学部 教授 石橋 良信 先生

研究会での講演内容
 今回の研究会は、昨年の2003(平成15)年7月26日に宮城県北部地方を中心に発生した一連の地震に対する主に水道施設の被害状況を調査した講師が、その結果をとりまとめた講演会である。
 この地震は、7月26日午前0時13分頃、宮城県北部を震源とするマグニチュード5.5(震源の深さ12km)の地震が発生し、宮城県鳴瀬町小野、矢本町矢本で震度Y弱を記録、また同日午前7時13分にはほぼ同じ場所を震源としてマグニチュード6.2(震源の深さ 12km)の地震が発生し、宮城県鳴瀬町小野、矢本町矢本、南郷町木間塚で震度Y強を記録、さらに同日午後4時56分にもほぼ同じ場所を震源としてマグニチュード5.3(震源の深さ12km)の地震が発生し,宮城県河南町前谷地で震度Y弱を記録した。
 大きな地震に対する水道施設の被害は、1978(昭和53)年6月12日午後5時14分、マグニチュード7.4(震度X)の地震以来ほぼ25年ぶりであった。講師の東北学院大学工学部教授の石橋先生は、その当時の調査結果との比較などで、特に農村地帯の被害について地方の中小の水道事業体のもつ課題などを指摘された。そのポイントは以下のとおり。

1)宮城県沖地震では飲み水としての水道が重要視されたが、今回は生活用水としての水道が重要視された。ペットボトルやコンビニエンスストアの普及の効果、農村ならではの住民の連帯感の表れは飲料水に対する深刻感を和らげた。
2)都会には少ない井戸、近場の温泉が洗濯を容易にし、風呂への苦慮から解放された。
3)宮城県沖で被害の大きかった石綿管の交換が進んでいて教訓が活きた。
4)水道関係の職員配置数、事業体間の支援態勢などの見直しが必要。
5)広域化されてはいるが、管網ではなく行き止まり管が多いため、本管破損は、復旧が長 期化してしまう。また継ぎ手の破損・離脱の被害が多い。
6)高置タンクが多く、加圧式タンク車の常備が必要。 (一部石橋先生の資料から引用)

 今回の話題では、農村地帯での被害のため、人間の10倍以上の水を飲む牛などに対する対策やペットボトルの普及が思わぬところで役立つなどこれまでとは違う面も報告され、近い将来に高い確率で発生が予想されている巨大地震への対策上から興味深い箇所がたくさん指摘された。
 残念だったのは、準備する担当者の責任で、事前のアナウンスが十分でなく、出席者が11名と少なかったことである。なお、会場として利用した東北工業大学一番町ロビーの4階のホールは50人ほど聴講できる施設であり、無料で借りることができるので、学会としても今後大いに活用すべき施設と思われる。


講演会の模様

inserted by FC2 system