●日本水環境学会東北支部「上水道研究会」実施報告●

(H16.12/15)

上水道研究会代表 今野 弘
(東北工業大学)

2004年度の「上水道研究会」を下記のように実施した。

開催日時 ; 2004年12月15日(水) 16:00〜17:40
開催会場 ; 東北工業大学一番町ロビー
          仙台市青葉区一番町1-3-1 ニッセイ仙台ビル 4F
           Tel 022・723・0538
研究会テーマ ; 韓国の水事情 −上水道の現状と課題−
研究会講師 ; 大韓民国 啓明大学環境学部 教授 李 泰官 先生
           (株)黎明食品 社長 金 鐘乙 先生

研究会での講演内容
 今回の研究会は、講師のお二人が来日、来仙されるのを機会に「上水道研究会」の講演会として企画した。
 講師のうち、李泰官教授は、東北大学大学院で修士(1988年度)、博士(1991年度)の学位を取得された方で、現在東北大学名誉教授の佐藤敦久先生のもとで水道工学の研究を進められた。現在は韓国の啓明大学教授と洛東江環境院院長を兼職され、大統領諮問委員や環境省飲用水委員など上水道の国家政策にも関わっておられる。もう一人の講師である金鐘乙先生は、食品会社社長の他に、韓国蔚山(ウルサン)広域市の体育会理事、商工会議所議員、地方裁判所調整委員、国際ロータリー第3720地区事務総長など活発な社会活動を継続される傍ら、現在啓明大学大学院博士後期課程2年に在籍する社会人博士課程の大学院生である。講演の要旨は次のとおり。

1)韓国の水資源状況−利用現状、降雨特性、ダム管理状況、流域の水質状況など日本との共通点の他、韓国の特徴として河川水の水利用が50%以上を占めることなどを指摘。
2)上水道の水源の水質状況として、BOD>3.0mg/Lのものも多く含まれ、下水道普及率がほぼ100%のわりに水質が悪く、これはノンポイント負荷の関与が考えられる点。
3)浄水手法は、粒状活性炭施設の導入が日本より進んでいると思われるが、水道水を直接飲用する国民は約2%足らずと低い。この理由は度重なる水道水の汚染事故による国民の水道に対する信頼度の低下が考えられる。ほとんどの国民は蛇口に高価な浄水器(十数万円)を取り付けている。
4)水道の問題点として、配水管中における残留塩素の低減による水質低下、消毒副生成物、管路の誤接合などを詳細な調査結果を示しながら解説。それらの対策などについても考え方を披露された。
5)啓明大学における研究課題を紹介され、特に金先生が研究している沈澱と浮上装置を組み合わせた処理施設は、HRTが10〜15分で、BODが80%、SSが95%程度除去できるというもので、政府から補助金を得て実施している。

 今回の話題は、日本の古くから隣人の水道の状況と課題を詳説するもので、たいへん興味深い多くのことが示された。李教授は、日本における東北大学、東北工業大学、石巻専修大学、他に岐阜大学、滋賀大学など多くの研究者と研究上の交流が多く、今後とも共同研究を通した交流が大いに期待できるまだ若手の教授である。
 今回の上水道研究会への出席者は、会場の都合もあって50名に達しない数字であったが、今後とも「各国の水道事情を生で聞くことのできる講演会」を企画していきたい。
なお、今回の講師は外国人といえども日本語に堪能な講師であったため、出席者にとってはわかりやすく、より親しみを持てる会であったことを付記し、また最後に本会の活動に対する(社)日本水環境学会東北支部の援助に感謝申し上げる。


講演会の模様
    
講演中の李教授
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