下水処理研究会第17回セミナー報告概要


主  催:(社)日本水環境学会東北支部下水処理研究会
後  援:(財)宮城県下水道公社
日  時:平成17年11月17日(木)13:30〜17:00
場  所:仙台市戦災復興記念館4F研修室
       仙台市青葉区大町2丁目12-1
参加者数:38名

<挨  拶>
(社)日本水環境学会東北支部下水処理研究会世話人 江成 敬次郎(東北工業大学環境情報工学科)

<セミナー>
テーマ:下水処理場におけるエネルギー管理

演題:地球温暖化防止対策の現状と課題
演者:山野 保彦(宮城県地球温暖化防止活動推進員)

1, 地球温暖化とは

1)温暖化の影響
・氷河がとけて後退。アラスカでは永久凍土がとけて樹木が倒れている。
・日本の気候帯が4〜6km/年で北上。長崎アゲハが北上。桜の開花が早まっている。
・仙台の平均気温が70年で1℃以上上昇。東京では約3℃上昇。1℃は温暖化の影響で、2度はヒートアイランド現象の影響か。
2)異常気象が頻発
・台風、ハリケーンの増加と強大化。洪水被害が増大。
3)温暖化のメカニズムと原因
・二酸化炭素等の温室効果ガスが地球からの放射熱を吸収。二酸化炭素は気温を適度に安定させるために適度には必要。
・大気の二酸化炭素濃度は産業革命後に1.5ppm/年で上昇。2100年には1000ppmと予測されている。1000ppmとは、感度の良い人では頭が痛くなったりする程の濃度。
・世界の気温は20世紀の100年間で0.6℃上昇
4)将来の気温上昇・海面上昇
・2100年には温度が1.4〜5.8℃上昇し、海水面が9〜88cm上昇する。
5)温暖化の深刻な影響
・農業生産量の低下で世界の穀物の需要と供給のバランスが崩れる。日本の食糧自給率は現在約40%で、食料への大きな影響が予想される。
・熱帯性伝染病の蔓延。
・海水面の上昇による砂浜の消失。国土の大半が水没してしまうツバルでは移住を計画。
・ブナ林の分布可能域が北上し、本州では狭い範囲となる。スキー場の使用可能地域が限られる。

2, 温暖化対策がめざすもの

・二酸化炭素濃度を安定化するには、排出量と吸収量を同量としなくてはならない。現在人為的な排出量は63億t/年,自然の吸収量は31億t/年,従って増加量は32億t/年。二酸化炭素排出量の大幅な削減が必要。

3, 京都議定書
・2008〜2012年の間に1990年レベルより全世界で5%削減する。日本は6%削減を約束。日本では1990年から2003年に排出量は8%上昇。目標達成には14%の削減が必要。

4, 一人一人の温暖化対策

・冷房温度を1℃上げ、暖房温度を1℃下げる。夏場の結婚式場等で、客に暑いと言われたら設定温度を下げざるを得ない。人々の意識改革が必要。
・アイドリングストップ。オイルの性能がよくなっているためアイドリングは必要ない。
・待機電力をカットする。コンセントを抜く。待機電力対策の製品を購入。
・シャワーを1人1日1分減らす。
・ジャーの保温をしない。
・テレビは見ない時には消す。
・買物袋を持ち歩く。
・省エネ電球の使用。同じ明るさでライフサイクルコストは1/3。

5, その他の温暖化対策

・太陽光発電とエコキュートを設置した家では、光熱費の全てが賄える。
・電気製品購入の際には、家電製品省エネカタログを参考にする。冷蔵庫などは、古い電化製品を省エネ対策商品に買い換えることで、削減された電気代で製品の購入費が賄える。



演題:阿武隈処理場におけるエネルギー管理の現状と課題
演者:手塚 功((財)宮城県下水道公社阿武隈処理場管理課長)


1, 県南浄化センター概要
・供用開始:昭和62年。処理区域:宮城県南部の5市6町。管渠長:90.3km。ポンプ場:6ヶ所。
・水処理方式:標準活性汚泥法。日最大処理能力:11,2000m3。日平均流入水量:80,000 m3。
・汚泥処理施設:消化槽,脱水設備,汚泥減量化設備。
・汚泥処分方法:焼却処理,セメント原料化,コンポスト。
・受電形態:6,600V高圧B季節別時間帯別U。契約電力:1,960kW。第1種エネルギー管理工場。
・汚水ポンプ:400V-22kW-150m3/h 固定速2台(池排水P),400V-85kW-960m3/h 可変速2台,6.6kV-140kW-1920m3/h 固定速1台,6.6kV-280kW-3840m3/h 可変速1台・固定速1台。
・送風機:400V-110kW-50m3/min 1台,6.6kV-300kW-175m3/min 2台,6.6kV-450kW-290m3/min 2台。


2,エネルギーの使用状況

 平成12〜15年度までは処理水量にほぼ比例して電力使用量が増加(処理水量1m3当たりの電力使用量:107Wh/m3)平成16年度は汚水ポンプの省エネ対策により処理水量が増加しているのに電力使用量が低下(94Wh/m3)。
 平成15年度の電力使用量の内訳は、沈砂池ポンプ棟が24%で送風機棟が40%。平成16年度は沈砂池ポンプ棟が23%に低下し、送風機棟が42%に増加。汚水ポンプの省エネ対策により相対的に送風機棟の割合が増加した。


3,今回の取り組み


1)省エネ対策前の汚水ポンプ運転
 6.6kVの中型と大型の汚水ポンプを中心に運転。週番切替を行い、固定速のポンプでの流量調整は吐出弁の操作で実施。

2)省エネ対策後の汚水ポンプ運転
 6.6kVの中型と大型の汚水ポンプはできるだけ吐出弁全開で固定速で運転し、400Vの池排水ポンプと可変速小型ポンプを組み合わせて流量を調整。

3)課題
対策後の運転方法では、各ポンプで運転時間に大きな開きができるため、オーバーホール等の時期の見直しが必要。


4,今後の取り組み


1) ポンプ井の高水位運転
 ポンプ井の水位を上げることでポンプの揚程が下がり(揚程差が短くなり)、電力使用量が低下する。
 現在は、使用していない沈砂池の流出ゲート側上部に開口部があるため、ポンプ井の水位を上げることができない。2年後に上部の開口部を閉じる工事を実施する予定。

2) 送風機の単独モード運転
 大型と中型の送風機を2台運転する場合、連動モードだと両方の送風機の弁を絞って運転。単独モードで大型の送風機を全開で運転し、中型の送風機を絞って運転することで電力使用量が低下する。

3) 処理水量の均等化
 管渠での汚水貯留をできるだけ行い、揚水量を均等化する。流入水の負荷が均等化するため、効率の良い条件での機器の運転が可能。夜間電力使用割合が増えるため、更にコストが低下する。
 但し、管渠の水位が高い時間に降雨によって流入水量が増加した場合の対応が問題となるため、こまめな気象情報の収集と管渠水位の調整が不可欠。


5, まとめ

 一人一人の意識改革が必要。余分な安全率の削減が省エネにつながる。但し、十分な安全性を確保することが前提。


演題:南蒲生浄化センターの省エネについての取り組みについて
演者:阿部 勝徳(仙台市南蒲生浄化センター主幹兼整備係長)


1, 浄化センターの概要

・簡易処理開始:昭和39年。高級処理開始:昭和54年。
・排除方式:分流式一部合流式。処理方式:標準活性汚泥法(擬似嫌気好気法運転)。晴天日最大処理能力:398,900m3。日平均水量(H16):344,476 m3。
・汚泥処理施設:重力濃縮槽,遠心脱水機,加圧脱水機,焼却炉。加圧脱水機は埋立処分する汚泥に使用(臭気対策)。
・処理方式の特徴:流入した汚水は沈砂池と最初沈殿池を通ってから揚水ポンプで反応槽へ送られる。返送汚泥は全て1箇所にまとまってから返送するため、施設全体が1つの処理系列のようなもの。
・受電電圧:66kV(特別高圧)。受電変圧器(66kV/6.6kV):10,000kVA 1台,7,500 kVA 1台。契約電力:6,500kW(H17),7300kW(H18予定)。自家発電設備:3,500 kVA 2台。


2, 省エネ事例

1) 変圧器の更新(平成15年度)
 7,500kVAの受電変圧器2台の内の1台を10,000kVAで高効率なものに更新。効率が良くなったことで、電力量が削減。しかし、高効率なものほど効率が最大となる負荷率が低下する傾向にあり、この10,000kVAの変圧器については30〜40%の負荷が最も効率が良い。このため、今後契約電力が大きくなり、使用電力が大きい時間(降雨時等)には、変圧器の2台並列運転を行う必要が出てくる。これを見込んで、電気設備の更新の際には、真空遮断器を変圧器の並列運転に対応した短絡遮断容量のものに変更している。

2)返送汚泥ポンプの運転方法変更(平成16年度)
 返送汚泥ポンプの回転数・台数制御の起動停止水位を調整することで、電力量を年間約100万円分削減。水位はポンプの運転効率に大きく影響する。

3)高圧モーターの電圧変更(平成18年度予定)
 揚水ポンプと返送汚泥の3.3kV高圧モーターを6.6kVに変更し、6.6kV/3.3kVの変圧器を使用しない。更に二次抵抗による可変速ポンプをインバータ方式に変更することで、電力量を年間約230万円分削減できる。

4) 散気方式の変更(計画)
 超微細散気板を採用し、散気方式を全面曝気に変更することで、風量を約55%に削減可能。散気方式の変更に合わせて、送風機の容量も変更し、基本料金及び従量料金で年間約4,600万円を削減できる。

5)照明設備の検討(計画)
 150W無電極放電管と400W水銀灯を比べると、無電極放電管は5倍程度寿命が長く、瞬時に点灯し、直下部では明るい。このため、平成18年度に屋外の150灯を水銀灯から無電極放電管に変更する予定。これにより年間約130万円分の電力量が削減できる。更に、瞬時に点灯する特性を生かして、常時消灯とし、必要時のみ操作室から点灯が可能とすれば、全灯を変更した場合には、年間約380万円分の電力量が削減できる。

6)前曝気槽等の貯水槽としての利用
 前曝気槽8,000m3と最初沈殿池3,000m3用いてピーク時の汚水を貯留し、夜間に送水している。これにより、夜間電力を有効に活用でき、負荷の均一化も図れる。

7)その他
 硫化水素から水素を製造する試験を実施。
 木材チップを利用し、濃縮汚泥を液肥とする試験を実施。




inserted by FC2 system