下水処理研究会 第19回セミナー報告 

主  催:(社)日本水環境学会東北支部下水処理研究会
後  援:(財)宮城県下水道公社
日  時:平成20年1月25日(金)14:30〜17:00
場  所:仙台市戦災復興記念館4F研修室
        仙台市青葉区大町2丁目12−1
参加者数:57人

<挨 拶>
(社)日本水環境学会東北支部下水処理研究会世話人 
  江成敬次郎(東北工業大学環境情報工学科)

<セミナー>
  テーマ:下水汚泥の有効利用

演 題:下水汚泥燃料化事業について
講 者:石田 重雄 氏(宮城県土木部下水道課技術補佐)

1,阿武隈川下流流域下水道事業について

・昭和60年から供用開始(一部)した。平成18年度末現在の流域関連市町数は11,処理面積7,648ha,処理人口279,300人,日平均処理水量86,011m3,下水道普及率73.2%である。
2,県南浄化センターについて
・燃料化事業は,建設と維持管理を一括委託し,受託事業者が設計・建設・運営(最長20 年間)する。
・製品となった燃料化物は処理場近隣の製紙工場へ石炭の代替燃料として売却する。
3,導入の目的
・地球温暖化への対応
 燃料化物(バイオ燃料)を石炭代替物として利用することで温室効果ガスが削減できる。
・汚泥処分費用の低減
 燃料として売却することや近隣事業者への搬送となることで汚泥処分費用の削減が可能 となる。
・汚泥処分のリスク分散
 現在実施している汚泥焼却(他処理施設での焼却処分)や,原料化(民間コンポスト施 設),また資源化(処理施設内のコンポスト施設)に加え燃料化事業を実施することで, 処理方法の多様化によるリスクの分散が図れる。
4,事業化までの経緯
・企業アンケート
 8事業所にアンケートを実施し,その結果4事業者から検討の余地があると回答が得ら れた。さらにこの4事業所についてヒヤリングを実施し,最も下水汚泥利用の可能性の 高い事業者を最有力なパートナーとして選定した。
・廃掃法上の取扱い
 利用する事業者が運搬費相当額の負担を了解することで廃掃法上の問題をクリアした。
5,事業手法の決定について
・事業については,従来方式・PFI方式・DBO方式を検討し,DBO方式で事業化することに決定した。
・入札については,燃料化物の品質や技術評価を行うため,総合評価技術審議会にて審議 した。
6,施設の概要
・間接加熱式汚泥乾燥造粒装置の概要
 熱媒体として油を用いた間接加熱型の乾燥方式であり,脱水汚泥を含水率10%以下ま で乾燥する機能と直径数ミリの粒状に造粒する機能を併せ持つ装置である。
・特長
 シンプルなシステムで保守が容易である,脱水汚泥の水分変動が緩和される,安全性・ 取扱い性に優れる,衛生的である,製品の熱量が高い等の特長を有する。
7,事業の効果
・温室効果ガスの削減
 燃料生成物を石炭代替物として利用し,年間5,827tのCO2が削減できる。
・汚泥処分費用の低減が図れる。
8,課題
・燃料化事業推進のための新たなユーザー開拓と逆有償の問題がある。
・燃料化施設と既存硝化施設との計画調整が必要である。


演 題:下水汚泥脱水ケーキのセメント資源化処理について
講 者:増池 秀郎 氏(太平洋セメント(株)環境事業営業部課長)

1,太平洋セメント(株)の会社概要と太平洋セメントの工場立地
・太平洋セメント7工場(上磯・大船渡・熊谷・埼玉・藤原・土佐・大分),関係会社各 社5工場
2,大船渡工場の沿革と大船渡工場の概要
・所在地:大船渡市赤崎町字跡浜21-6,敷地面積:約70万m3 ,生産量高:約189万t/年 (2006),生産品目:ポルトランドセメント・混合セメント,キルン能力:1号(RSP式) 3,200t/d,5号(RSP式)5,200t/d,従業員数145名(2007.9.11現在),生産品種割合:普通 セメント73%,低熱セメント17%,中庸熱セメント7%,高炉セメント2%
3,セメント製造品種と用途
・普通ポルトランドセメント:一般的なセメント
・中庸熱ポルトランドセメント:大型構造物に適する
・低熱ポルトランドセメント:長期強度発現性や耐久性に優れる
4,太平洋及び大船渡工場生産数量
・1996年以降生産量は減少している。
5,大船渡工場リサイクル資源使用実績(2006)
・マテリアルリサイクル(燃え殻,ばい塵,汚泥・・・)395,602t/y
・サーマルリサイクル(廃タイヤ,廃プラスチック・・・)21,518t/y
・副産物(高炉スラグ,副産石膏・・・)150,166t/y
6,下水汚泥をセメント資源化できる理由
・下水汚泥に含まれる無機系成分は,セメント製造にとって有害となる塩素・リン含有量が多いことを除きセメント原料成分に近い
7,下水汚泥の使用方法
・受入室に搬入された下水汚泥を貯蔵タンクに一時貯蔵し,圧送ポンプでロータリキルン (1,000℃)に投入する。下水汚泥の水分と可燃分は,この高温炉内で蒸発や燃焼し灰が残る。この灰は粘土の成分に近く,プレヒータ−内に投入された原料と混ざり合い,キルン内(1,450℃)で焼結され,クリンカ(セメント半製品)になる。
8,下水汚泥使用上の問題点と対応
・汚泥中の高濃度塩素はキルンを停止させることがあり,処理場へ脱水方法について要望 することがある。
・臭気対策として天蓋付密閉車両での運搬を依頼している。
9,下水汚泥のセメント資源化による利点
・安定的に大量(50,000t/y)の資源化ができ,環境保全に貢献できる。
・廃棄物が発生せず,最終処分場の延命化に繋がる
・下水処理場での汚泥の焼却は補助燃料を必要とするが,これが不要となり二酸化炭素の発生が抑制できる。
・処理場の焼却設備が不要となり,コストの低減に繋がる。
10,大船渡工場下水汚泥受入実績
・年々受入汚泥量は増加している。今年度は宮城県が最も多く(69%),福島県(15%), 山形県(12%),岩手県(4%)の順である。
11,セメント資源化の特長
・代替原料や燃料として,全量を資源として有効に再生利用できる。
・最終処分(埋立)発生しない。
・安全,大量,安定,安価な処理が出来る。
・塩素や重金属類の含有量に規制値を設けている。
12,受入開始までの流れ
・情報の検討から受入開始まで,概ね1ヶ月間程度を要する。

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