「平成14年度(社)日本水環境学会東北支部セミナー」
に参加して(平成14年10月26日に実施)

 現地見学会について
 今回私は初めて阿川沼を訪れました(写真1)。 宮城県仙台産業振興事務所の方より,阿川沼の概要および凝集加圧浮上法による直接浄化法の説明があり, 実際にプラントを見せていただきました(写真2,3)。はしごを上り,装置の上から凝集沈殿,加圧浮上 の工程を見学しました。上から眺めるというのはちょっとわくわくすることであり,また処理方法を容易 に理解することができました(写真4,5,6)。
(写真1) (写真2) (写真3)
(写真4) (写真5) (写真6)

 続いて,東北大学大学院工学研究科環境生態学研究室とスカイ環境研究所による植生浄化研究施設を見学しました。4本の幅1m×長さ25m×水深0.2mの水路にはヘチマが植栽されてありました(写真7,8,9,10)。 ヘチマはつる性の植物であり,地上部のバイオマスが多い,実はたわしなどに,つるの切断部からの滲出液は化粧水 などに利用できる,といった特徴があることから,この植物の利用は非常にユニークであると感じました。 残念ながら今年は台風の影響によりヘチマが不作だったということで,実がたわわに実っている光景は見ら れませんでした。維持管理を行うご苦労が思い計られ,またそこから得られるデータは非常に貴重なもので あると思われました。今年は地元の小学生が総合学習で施設を見学に訪れたとのお話でしたが,小学生たちにとって,ヘチマが水を浄化してくれるという話は非常に興味をそそられるのではないかと思いました。
今回阿川沼を見学して感じたのは,地域の住民の方が水質保全について理解するための非常に良い教材が, こんなに身近にあるのに埋もれてしまっているのではないかということでした。私自身,子供の頃,菖蒲田海岸に海水浴に訪れていましたが,このような沼があることはまったく知りませんでした。また,知っていたとしても,柵で囲われ,「実験施設」と書いてがあるので近づきにくいように思います。恐らくいたずら や事故などの問題があるのだとは思いますが,阿川沼にもっと近づいて,汚濁している様子を感じ,そのた めに物理化学的処理や生物学的処理がなされることを一連の流れとして捉えることができたら,今後の環境 問題への取り組みへのキーワードである「住民参加」が可能になるのではないかと思いました。このたびの 現地見学会への参加は,産・官・学の足踏みがそろっている事業を見ることができ,非常に有意義でした。 準備してくださった方々へ感謝申し上げます。
(東北工業大学環境情報工学科 小浜 暁子)
(写真7) (写真8) (写真9)
               
     (写真10)     


セミナーについて
 セミナーでは,須藤隆一先生による基調講演と(写真11), 桜井氏による農業用ため池の水質浄化への取り組みおよび佐々 木久雄氏による海藻アカモクによる水質浄化について報告が行 われました。須藤先生は,諫早湾,三番瀬,始華湖(韓国), 松島湾等の問題について紹介され,沿岸域の環境保全の重要性 を強調されましたが,とくに,始華湖の干拓事業が中止になっ たのは,住民運動が原動力だということが印象に残りました。 日本でも近年さまざまな公共事業の中止や見直しがなされてい ますが,やはりこれも住民の声の力の影響が大きいと思われます。
 桜井さん,佐々木さんも,非常に広い視点から,特定の地域で 水質浄化事業に取り組み,確実に成果をあげていらっしゃること がわかりました。このような,地道な取り組みが地域の環境保全 には一番早いのだということを改めて感じました。
懇親会について(写真12)
 今回のセミナーや懇親会に七ヶ浜漁協参与の伊藤さんが来られていたのがとても印象深かったです。
 今のところ,環境保全や政策は学術的な知識を有する学者と役所が主体となって行っているのが現状です。 しかし,その対象となる地区や地域では様々な生業を成している方がたくさんいらっしゃいます。このような 方々は生活を営む上で環境政策に対してたくさんの意見があります(諫早でも同じですね)。また一方では環 境保全を行うのに必要な地域特有の情報を,学術的でないにしても多く有しているものです。環境政策を進め る上では,このような方々と膝を交えて多くの情報を教えて頂き,またこちらからも伝えることがまずもって 大事なのだなと感じました。
上記のことは理屈では理解していたつもりでいましたが,今回の懇親会で伊藤さんのお話を聞き,改めて新鮮 さを感じました。
(宮城県下水道公社 鹿野 信宏)
(写真11) (写真12)


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