●平成18年度 (社)日本水環境学会東北支部セミナー 実施報告●
(平成18年 12月16日)

 平成18年12月16日(土)13:30〜16:30、盛岡駅西口にほど近い岩手県民情報交流センター(通称アイーナ)において標記セミナーを開催しました。参加者は44名。

 岩手県立大学の山田幹事司会のもと、石橋支部長の挨拶で開会、テーマ「岩手県の水環境の現状と課題」に沿って5名の方々にご講演いただきました。

1.一関地域における森川海の保全・創造に向けた取組み
                                    岩手県  荒谷克己

 岩手県ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する条例を制定した。流域ごとに現状と課題を整理したうえで目指すべき流域の姿を明らかにし、指標を掲げて改善に取り組んでいる。行政と住民の協力、支援方法の工夫、活動団体の資金調達が今後の課題である。

 Q 全ての流域計画が策定され、工事が着工しているのか? 二戸カシオペア流域は?
 A 計画は2〜3の地域を除き策定は完了している。個別の工事はよくわからないが、大体着工していると思われる。カシオペア地域は今年度作成された。

2.窒素・リン物質循環フロー調査
                     岩手県  安部隆司

 窒素・リンは自然界内で循環しているうちはよいが、多くなると人や土壌を汚染する。岩手県では、南北の地域で基準値を超える硝酸態窒素が検出された井戸が多い。今回の調査では田畑は汚染していないが、引き続きモニタリングと啓発活動が必要である。

3.旧松尾鉱山新中和処理施設の現状とこれから
                        石油天然ガス・金属鉱物資源機構  上田英之

かつては東洋一の硫黄鉱山として名をはせた松尾鉱山だが、閉山後は毎分20トンもの強酸性水を出す、負の遺産となってしまった。JOGMECは岩手県より委託を受けて、鉄酸化バクテリア方式で鉱廃水を処理している。そのおかげで北上川は清流となった。もし施設が停止すれば500億円もの被害が予想される。

Q 凝集剤は何の目的で何を使っているか?また、澱物の再利用方法は?
A 澱物の沈殿速度を上げるため、高分子系の凝集剤を使用。澱物は顔料やフェライトとして再利用が可能であることを確認した。品質には問題ないが、シリカと砒素を除去する必要があるのでコスト高になって、既製品に勝てない。

Q 近年のpHが安定してきたのは、地下で空気にふれなくなったためでは?
A 昔は計測していないからハッキリとは言えないが、近年は溶存酸素が減ってきている。

Q 酸化を防止するためにもう一度覆土してみては?
A コスト的になかなか出来ない。

4.岩手県における小型合併処理浄化槽の現状と今後の方向性
                           岩手県浄化槽検査センター  稲村成昭

 合併浄化槽には個人設置型と市町村設置型がある。個人設置型は保守管理を適正に行なわない人もいるため、必ずしも水質はよくない。しかし市町村設置型は、管理は市町村が行なうので、適切な管理ができる。岩手県は全国的にも合併浄化槽を設置するうえで優位な県となっている。また、心配される処理水質も、高度処理型では広域処理と同じ程度の処理水質が得られる。

Q 型式の違いによる性能の評価に関する情報をいかに伝えていくか
A ホームページでも公開している。浄化能力の高い浄化槽を開発した企業の中には、積極的に情報提供を望む声もある。

Q 放流先の側溝などで希釈されるか?
A 普通は問題ない。100や200ppmだと臭いの問題が出てくる。個人設置型が多いのでは。性能のいい物を使い、きちんと管理していくことが大切。

5.アユ産卵場の構成要因に関する現地観測
                                岩手大学工学部  堺 茂樹

  近年のアユ個体数及び産卵場の減少に際して、保全・創出の指針を作る。優秀な産卵場とは、@瀬の形状が安定、A瀬の中央から瀬尻にかけて多く分布、B水深が15cm程度、C流速は50cm/sec以上、D河床にある程度以上の細粒成分を含む、という5つの要素があげられた。平均的な物理特性は上記のようであるが、上流からの出水などの影響により年ごとの差がある。

Q 04-05年にかけての回復の土砂の供給源は?
A 上流からのもの。(供給を止めないようにするのも大切)

Q 卵の付き易さの問題で、粒径の問題ではないのでは?
A その通り。小さな礫は、周囲との摩擦で洗われているので付きやすいのでは。


セミナー風景
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