●平成20年度東北支部セミナ−・現地検討会の実施報告●
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生物多様性条約が発行して15年が経過しました。日本では、2007年11月に第三次生物多様性国家戦略が閣議決定され、政府としての取り組みが始まります。生物多様性によって享受してきた便益(生態系サービス)が低下してきた要因の一つに、経済行為による「水循環・窒素循環」の変化があります。第三次国家戦略では、従来からの「種・生態系の保全、絶滅の回避」や「持続可能な利用」に加え、「経済活動への組み込み」をはかり、さまざまな社会経済活動の中で生物多様性保全・持続的利用を進めていきます。4つの基本戦略では、生物多様性を社会に広く浸透させると同時に、「地域における人と自然の関係の再構築」や「森・里・川・海のつながりの確保」を、数値目標を立てた具体的な施策で進めていきます。 | 写真1 講演中の鈴木氏 |
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1985年に国内2番目にラムサール登録された伊豆沼は、保全に向けて早くから対策が講じられてきました。しかしながら、「生物種の減少・単純化」「物理的湖沼環境の変化」「地域住民と沼とのが関わる機会の減少」といった課題があります。自然再生推進法の導入によって、かつて沈水植物が豊富であった1980年前の植生の回復をめざしています。再生事業のスケジュールはまだこれからであるものの、「伊豆沼・内沼らしい」湖沼環境の再生と地域社会とのつながりを求めていきます。 | 写真2 講演中の佐藤氏 |
ほ場整備により用排水路分離が進んだことで、水田と水路とを行き来できなくなってしまった生き物の移動手段を確保するために、試行錯誤しながら「水田魚道」を開発してきました。重視しているのは、持ち運びしやすいこと、既製品利用により単価を安くすることです。魚道設置には、田んぼ周辺の魚種の確認のほか、利用する魚種に応じた構造の工夫が必用です。魚が遡上するときに引っかかりがある「波付き丸型」で作る可動式・固定式魚道、「波付きU型」で作る千鳥X型等があり、遊泳魚や底生魚で使い分けることができます。また、冬期湛水(ふゆみず田んぼ)の実践で田んぼでの小動物回帰が確認されていますが、慣行栽培などと3年おきぐらいで順次回していく必要を感じています。 | 写真3 講演中の三塚氏 |
写真4 朝陽の中の雁の飛立ち |
写真5 全員で記念撮影 |
現在、伊豆沼・内沼には富栄養化と生物多様性の減少といった問題があります。50年ほど前までは地域住民が動植物を採取していたので、栄養分が沼外に運び出された結果、水質などが保たれていたと考えられます。利用が減ったことで栄養塩類がたまり、汚濁の内部負荷が高まっています。また、オオクチバスなどの外来種の侵入により、在来魚種が直接的に被害を受けるほか、小魚を補食する鳥類の生息数にも影響を与えています。ハスの刈り取り等による水質浄化や、開発した人工産卵床によりブラックバスの駆除を進めています。 | 写真6 講演中の嶋田氏 |
伊豆沼・内沼では、集水域も含め、13科40種の魚類が確認されています。1995年と2000年との漁獲量を比べると1/3に減っています。とくにモツゴやタナゴ類が減っています。これは、湖沼環境の悪化に加え、バスなど外来種の侵入が大きな原因です。オオクチバスは、昆虫類や小型魚のほかネズミの仲間も捕食していることが確認できました。バス駆除を目的に、人工産卵床による卵や親魚の駆除(繁殖抑制)と定置網・刺網による駆除(個体群抑制)、さらに集水域ため池の池干しによる駆除(流下防止)を実施して、在来種の復活をめざしています。 | 写真7 講演中の進東氏 |
写真8 冬水田んぼ餅米の餅つき |
写真9 つきたての餅で昼食 |